ジェフリー・バワがインフィニティープールの生みの親と言われているが、はたしてそれはどのようなものか?そして本当だろうか?
そのことが気になり、生みの親のきっかけとなったThe Triton Hotel トライトンホテル(aka Hritance Ahungalla Hotel 現ヘリタンスアフンガラホテル 竣工1979年)を訪ねた。
2023年12月25日、クリスマス休暇でうかれまくっている欧米からの観光客でごった返しているに違いないと思い早めにチェックイン。
思いのほかスムーズにチェックインをすませたと思ったが、エントランスロビーから部屋までの道のりが思いのほか長い。
それもそのはず、バワは海に面した部屋を持つ 2 つのウイング(宿泊棟)を持つ水平にダイナミックなホテルを設計したのだ。
この航空写真をみるとよく分かるが、南北に長く、端から端まで400メートル以上はあるかと思うが、中央の建物であるロビーから始まり、彼はウイングを分割し、前後にスライドさせて90度回転させ、海に面した一連のオープンサイドコートと、それに対応する一連の囲いのあるガーデンコートをさまざまなレベルで作成しアクセスを活性化していた。
ロビーに面するガーデンコートには建設時に物資の搬入などに使われていたエレベーターが遺構として残されているのも面白い。
今回、予約したデラックスルームは北側のウイングの一番端であるがその距離も楽しませてくれるくらい、その道なりにある中庭や風景に心を踊らされてしまった。
部屋に入ると真鍮でできたバワデザインの"ベルランプ"がお出迎え。
部屋を特徴づけている。
しかしながら、窓際の遮光スクリーンのデザインが稚拙だったり、デスクの位置がコーナーの半端な位置にあったりと、部屋のレイアウトや仕様はそこまで洗練されているとは思えない。
バスルームもバワらしいタイルや色づかいは感じられず、無難にスッキリとまとまっている印象だ。
しかし、部屋付きのテラスは海側に開けていて、1990年代に拡張された宿泊棟と2つ目のプールが望めて見晴らしはよい。
さて、表題の世界初のインフィニティープールであるが、チェックイン時にはゲストでごった返していたので、翌朝にじっくり味わいたいと思い、朝食前に出かけた。
ロビーを通り過ぎると海に開けたスペースがある。
それがバワのインフィニティープールであった。
風も穏やかな朝の静寂に佇むプールは鏡面となり天を映し、海に向かって伸びていく。
無限の世界が感じられた。
また、バワ本人は次のように述べている。
「すべてが同じレベルにある。世界は平らだった、アフリカが見えるだろう!」
バワ自身は同性愛者でもあり、宗教の垣根を越えて設計活動をしてきた。その影響もあるのか、何事もフラットな考えができると考えている。水という重力により完全なる水平にとなる物質を使い、平等というそれを表現したかったのではないだろうか。
そしてプールの縁にはラタンとチーク材でつくられたラブチェアと呼ばれるバワが好んでつかっていた椅子が象徴的に置かれている。
座った時にペアが向かい合うように座れる椅子である。平らな世界に愛を語り合う。なんともロマンチックではないか!
バワの初のインフィニティープールはとても壮大な世界観で形作られていたことが訪れてはじめて感じることができた。
その後気になり、インフィニティープールについてさらに調べてみた。
しかしここで重大なことがわかってしまったのだ。
どうやらインフィニティープールは1970年前後に竣工した、アメリカ人建築家のジョン・ロートナーが設計したレイナー・バーチル邸であったと記されている。
現代建築における最初のインフィニティープールはアメリカにあったのだ。
John Lautner’s Silvertop Residence, Infinity Pool, Photo from www.houzz.com
しかし、レイナー・バーチル邸のそのプールは写真を見る限り、小高い丘の上に位置していて、海と連続させインフィニティー(無限遠)という概念を意図したものではなさそうだ。
そう考えると、海沿いのロケーションで、リゾートホテルのプールで最初にインフィニティープールを取り入れたのはバワということになるだろう。
このプールで泳いでいるとまさにインフィニティー(無限遠)を感じられるのだ。
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